よくあるQ&A

よくあるQ&A

歯と口の健康づくりについて簡単に教えてください。

二十一世紀を迎え、日本は急速な勢いで高齢化社会を迎え世界一の長寿国になりました。健康で長生きをすることは皆の願いです。そのためには自分の健康は自分で守っていく決心が必要になります。現在、歯と口の健康が身体全体の健康と深いかかわりあいがあることがわかっています。
歯科の二大疾患と言われるむし歯と歯周病を放っておくと全身的に影響します。
今回はむし歯についてお話しいたします。ひとの大人の歯は、上下それぞれ切歯が四本、犬歯が二本、小臼歯が四本、大臼歯が六本の合計十六本で、三十二本で成り立っています。親知らずと呼ばれる第三大臼歯は生えない人もあり二十八本から三十二本の間であれば正常です。

むし歯について:

むし歯は歯の硬組織と呼ばれる組織が壊されて行く病気です。最初、歯の表面のエナメル質(時にはセメント質)は崩され始めて、やがて深部の象牙質に進み、ついには神経と呼ばれる歯髄にまで破壊が進み、ひどい痛みや時には発熱などを伴う重篤な症状を起こします。最近ではストレプトコッカス・ミュータンスと言う細菌が中心になって、口の中に入ってきた糖分を食べることからむし歯が始まり進行していくことがわかっています。ミュータンス菌などが糖分を代謝してべとべとになって歯の表面に付着したものが歯垢(プラーク)です。その中で酸が作られて歯が溶かされて行きます。

むし歯のできやすいところ:

むし歯は、歯垢のたまりやすいところや除去しにくいところができやすい場所です。
*かみ合わせの面の溝
*歯と歯の間
*歯と歯肉の境界部
*入れ歯と歯が接している歯
*歯周病で露出してきたセメント質

むし歯の進行と処置:

むし歯の進行の度合いでC1~C4に区分けしています。
C1.深さはエナメル質に限局し、症状はなく処置は簡単で処置時の痛みもない。
C2.深さはエナメル質を越えて象牙質に達する。冷たいものがしみる。食物が入ると痛い。病変を除去してプラスチック系や金属のものを詰めたりかぶせたりする。
C3.深さは象牙質をつきぬけて歯髄に達します。激しい痛みがある。歯髄が死んで根の先の骨の中にまで感染すると大きく腫れたり重い症状になることもある。歯髄を除去する処置をする。すでに歯髄が死んでいる場合には通院回数が増えることがしばしばあり抜かなければならない場合もある。根管の内部の処置が終わったら詰めたり冠をかぶせたりします。
C4.歯冠と呼ばれる部分が全部崩壊して根だけになっている。腫れたりしてして痛む場合と無症状の場合があります。

中・高年者のむし歯の特徴:

子供のころから青年期にかけては、むし歯はエナメル質から始まって徐々に深いほうに進んでゆきますが中・高年者では歯の首の部分(歯頚部)から発生するむし歯が目立つようになります。歯頚部のエナメル質とセメント質との境界部や、歯肉が下がって露出してきた根のセメント質から発生して象牙質の深部に進行して行きます。一度に数本あるいはそれ以上にわたって発生し、歯の全面をぐるっと取り巻くように侵されて行くのが特徴です。歯頚部を充分にブラッシングし、早めに処置することが大切です。

むし歯の予防:

むし歯は食物(糖分)・細菌・歯の三つの要素が重なってはじめて発生します。
したがって

  • 甘いもの(砂糖)をやたらに食べない。
  • 食べたあと歯磨きをして口の中の唐や細菌(歯垢)を取り除く。
  • 歯を強くするために栄養に気を付け、フッ素を利用する。
  • 定期歯科健診を受ける。

歯を失う原因の多くがむし歯です。今日から歯と口の健康管理をあらためて始めてください。

歯周病について教えてください。

歯科の二大疾患はむし歯と歯周病です。歯周病は生活習慣病といわれています。

歯周病の症状:

歯周病は、歯を支えている歯の周囲の組織(歯肉・歯根膜・歯槽骨など)におきる病気の総称です。
初期には歯の周囲の歯肉にだけ炎症がおこった状態を歯肉炎といいます。歯肉炎の症状は、歯肉が赤みを帯びて腫れ、歯磨きの時やりんごなどをかじったりすると出血します。さらに症状が進んでくると、歯の根を支えている歯槽骨をとかし始めた状態を一般に歯槽膿漏と呼んでいます。これが歯周病です。この症状は歯肉が腫れて少しの刺激でも出血し、冷たいものが歯にしみてきます。身体が疲労していたり体調が悪いときに歯の手入れを怠ってしまうと歯肉が大きく腫れたりすることを繰り返します。歯周病がやや進行すると、歯肉から出血や膿が出て口臭がします。歯が動いて食べ物が噛みにくくなります。歯と歯の間に食べ物が挟まることが多くなります。歯の根が見えてきて歯が長く見えます。もっと進行した歯周病は、歯がぐらぐら動いてしっかり噛めません。時々歯肉に膿がたまって腫れて痛みます。歯を支えている歯槽骨はほとんどとけてなくなります。

歯周病の原因:

  1. 歯垢(プラーク)
    歯周病の原因の大半が歯垢(プラーク)です。歯垢は歯と歯肉の境界に付いている黄白色のねばねばした細菌のかたまりです。その細菌の出す毒素によって歯肉に炎症はおこってきます。
  2. 歯石
    歯石は歯周病の直接の原因ではなく誘因物質です。
    歯垢が唾液の中の成分が加わって硬くなって歯にくっついているものです。歯石が有ると歯垢がくっつき易くブラッシングもしにくくなります。歯石は歯磨きでは取れません。
  3. 噛み合わせ(咬合)
    噛み合わせが悪く過重な負担が歯にかかると歯の周囲が痛めつけられて歯周病を引き起こします。
  4. その他
    ・長期間、不適合な義歯などを使っている場合なども歯垢が付きやすくなります。
    ・いつも口で呼吸する人(口呼吸)、歯並びが悪い人も歯垢が付着しやすいために歯周病にかかりやすくなります。
    ・糖尿病などの全身疾患、栄養障害なども歯周病を進行させる原因になると言われています。 歯周病の予防

1. 家庭で行う予防法

  1. 歯磨き(ブラッシング):歯垢を付けたままにしておく事が歯周病の最大の原因ですので、歯垢(細菌の塊)を取り除くことが最も良い方法です。
    そのためには上手な歯磨きをすることです。歯磨きの方法はその人に合わせて良い方法を選んで行います。また、歯ブラシ以外に歯間ブラシ、デンタルフロスなどを使うとよりきれいにすることができます。
  2. バランスの取れた食生活と規則正しい生活で全身の健康を保つ。軟らかく歯にくっつきやすいものはさけて、しっかり噛んで食べることを心がけましょう。
  3. 定期的に歯科検診を受けましょう。

2. 専門化が行う予防法

  1. 専門的な清掃:歯の周りをきれいに滑らかにして、歯垢をたまりにくく、歯ブラシの効果をあげやすくします。
  2. むし歯の治療や、古くなって不適合になった入れ歯(義歯)の調整や再製などをする。
  3. 歯磨き(ブラッシング)、その他の指導。 d 定期検診。 歯周病の自覚症状

歯周病の初期は自覚症状もなく進行しますので、少しでも異常を感じたらできるだけ早めに専門化をたずねて、必要であれば適当な治療や指導を受けることが必要です。次の表は歯周病のセルフチェック表です。これだけで決めてしまうのは充分ではありませんが、目安として一度チェックしてみてください。

チェックポイント

(該当する項目の点数を合計してください) 点数
1 歯肉は、うすいピンク色で、歯と歯の間の歯肉は引き締まっている。 0点
2 歯肉が、紫色や赤色になっている。 5点
3 歯肉がむずがゆく、歯が浮く感じがする。 5点
4 歯磨き程度の軽い刺激で、歯肉から出血することがある。 5点
5 朝起きたとき、口の中がねばねばする。 10点
6 歯肉が赤く腫れてぶよぶよする。 10点
7 何もしなかったのに歯肉から出血する。 15点
8 歯が浮いて、食べ物が噛めない。 15点
9 冷たい水でうがいをするとしみる。 15点
合計 0点 5~25点 30点以上
アドバイス 歯肉は健康です。
今は健康でも安心は禁物。
毎日の効果的なブラッシングで歯周ポケットの中をクリーンに保ちましょう。
歯肉炎かもしれません。
1.ブラッシングで歯周ポケットの中をクリーンに保ちましょう。
2.歯科医院で受診しましょう。
歯周病かもしれません。
すぐにでも歯科医院で受診しましょう。

(資料:ライオン歯科衛生研究所)

歯は妊娠中にでき始めると聞きましたが本当でしょうか。

昔から「一子産むと一歯失う」と言われてきましたが、現在では子供を産むから歯が悪くなることは無いというのが定説です。ほとんどの乳歯は妊娠中にでき始め、胎児の体長がまだ1センチくらいのごく初期の時に前歯の歯の芽が作られます。それが胎生約6~7週です。
20本の乳歯が一度にできるのではなく、歯の種類によってまちまちです。
妊娠中に歯の頭(歯冠部)の部分が完成され、出生後に歯の根が完成します。妊娠したことがわかった頃には、乳歯の芽は作られ始めていると思ってよいでしょう。従ってしっかりしたよい歯を作るためには、妊娠前はもちろん妊娠中には良質なたんぱく質を充分に取ることが必要です。妊娠中期にはカルシウム、リンなどの無機質やビタミンA,Dなどの補給が必要です。妊娠中のバランスの取れた栄養摂取のために、自分の(妊婦の)歯と口の健康には特に気を配ってください。妊婦のむし歯や歯周病は進行が早いので、妊娠する前から歯の定期健診に努めてください。妊娠後期では歯科治療が困難になるため、なるべく5~7ヶ月の安定期に必要な治療を終えておくほうが安心です。また、乳歯だけでなく一部の永久歯も妊娠中に歯の元ができることを知ってほしいと思います。

やっと歩行ができたばかりの乳児ですが、転んで歯を打ちました。少し歯が動いていますがこのまま放っておいてもかまわないでしょうか。

誕生が来る前後には、はいはいをし一人立ちして歩行ができるようになります。 階段を昇り降りしたりテーブルの上のものを取ろうとして転んで怪我をすることがよくあります。
歩行運動は何度も転びながら上達していくものですが、ちょっと目を離したすきに階段から落ちたり机の角で打ったりして怪我をすることが多いようです。怪我をしたときには落ち着いて全身状態を観察し、どこを怪我したのかを調べ応急処置をします。外観に何も傷がなくても、口の中では舌をかんだり歯茎を切ったり歯を打っていることがあります。口の中の出血は、唾液と混ざって大量に出血しているように感じるときもありますので、出血場所にきれいなガーゼか綿花などで圧迫して止血します。
ご質問のような歯の打撲では歯の破折、歯牙脱臼が考えられます。もし今までの咬み合わせと大きく違っていたり、歯がぶらぶら動く場合には歯科受診されたほうがよいでしょう。X線撮影などで骨や永久歯に障害があるかどうかを検査します。このままにしておくと歯髄(歯の神経)が死んでしまい、歯の色が変わってきたり骨の病気になったりすることがあります。歯牙破折が小さい時はむし歯の処置と同じ治療方法です。歯根破折の時には残念ながら抜歯です。いろいろな場合がありますので、できれば歯科受診されて処置をされたほうが安心でしょう。

昔からよく咬めば健康になる言われていますが、本当でしょうか?

高齢化社会が訪れ、老人の方に今何が一番の楽しみかをお尋ねすると「食べること」が最も多いということです。赤ちゃんからお年寄りまで、何でもおいしく食べられることが一番の幸せです。お口の中に何か問題があるときには食事がおいしく食べられません。普段からコンディションを整えておくことが健康の第一歩になります。今回は食物をしっかり噛んで味わうことの大切さについて述べたいと思います。
ヒトの歯は生後半年あたりから生えはじめ、約二歳で乳歯20本が生えそろいます。その間、食べ物をよく噛んで栄養を取り、基礎的な身体をつくり成長します。小学校に入学する6歳ごろから乳歯が抜け落ち永久歯が生え始めます。また、6歳臼歯と呼ばれる第一大臼歯が生えます。中学生になる頃には乳歯が全部永久歯に代わり12歳臼歯と呼ばれる第二大臼歯が生え永久歯28本がそろいます。その奥には親知らずとも言われる智歯が生える人もいますが生えてこないか最初から無い方もいます。
歯の形はそれぞれの役割があってお互いに支えあっています。たとえ一本の歯が壊れた場合でも噛み合わせがずれてきたり歯並びが変わったりします。
歯を支えているのはあごの骨、歯肉などです。目に見えている歯はその一部分で骨の中に埋まっている長さはその二倍以上あります。
ヒトの歴史を見ると現代人はあごの骨が小さくなってきています。歯の大きさはそれほど小さくなっていないために歯並びが悪くなっています。
私が子供の時には両親から「よく噛んで食べなさい」と言われました。牛乳を飲むときにもよく噛んでから飲みなさいとまで教えられました。それはよく噛めば噛むほど唾液がよく出るからでしょう「つば」と言えば汚いもののように思えますが実は唾液には身体にとって役に立つ働きが多くあります。唾液は成人で一日に1.5リットルものたくさんの量が出ます。大きな唾液腺が左右に三対、口の中には無数の小さな唾液腺があります。唾液の量の多い少ないがむし歯や歯周病にも関係します。

主な唾液の働きは

  1. 抗菌作用
  2. 洗浄作用
  3. 希釈作用
  4. 緩衝作用
  5. 排泄作用
  6. 嚥下の補助作用
  7. 消化・溶解作用
  8. 再石灰化作用
    などです。

現代人は昔のヒトと違って充分に咀嚼しない、歯を使わない、よく噛む必要のあるものを食べなくなったことがいろいろな病気の原因になっているのかもしれません。自分の健康な歯でよく噛み楽しい食生活をしていただきますようお願いいたします。